妊娠後期の症状と
注意すること
記事内容
妊娠後期は赤ちゃんの成長がさらに急速に進み、お腹も大きくなってくる時期です。この時期には妊娠中期とは異なる症状や注意すべきポイントがあります。出産や出産後の準備も本格的に進める必要があります。妊娠後期の代表的な症状や注意すべきことをしっかりと理解し、安心して過ごせるよう知識を身につけておきましょう。今回は、妊娠後期に現れる症状と注意すべきポイントについて詳しくご紹介していきます。
この記事は次のような人におすすめ
- 妊娠後期をもうすぐ迎える人
- 妊娠後期の特徴や症状を知りたい人
- これから迎える出産に不安がある人
妊娠後期の期間とは
妊娠後期とは、妊娠8〜10ヶ月の期間のことで、赤ちゃんはお腹の上からでも動きがわかるほど大きく成長します。赤ちゃんは約20分ごとに寝たり起きたりを繰り返しています。子宮が大きくなり胃が圧迫されるので、一度にたくさん食べられなくなります。1日3食にこだわらず、少しずつ小分けに食べる(分食)のもよい方法です。
臨月とは
妊娠の最終月である妊娠36〜40週頃のことで、もうすぐ出産を迎えるという時期です。お腹が大きくなり、赤ちゃんの動きも活発に感じられます。体型の変化による腰痛や、大きくなった子宮の圧迫による頻尿や尿漏れなどの症状も現れることがあります。また、出産の兆候を知っておき、陣痛がきたらどう動くかを考えておけると安心です。出産準備を整え、定期的に妊婦健診を受けながら赤ちゃんを迎える準備をしましょう。
妊娠8ヶ月(28週〜31週)
赤ちゃんの体格や運動機能、脳はどんどん発達して、胎動も力強くなります。胎動を痛く感じることもありますが、赤ちゃんが元気な証拠です。
母体の特徴
動悸や息切れをしやすくなったり、お腹が張りやすくなります。大きくなったお腹によって足元が見づらくなるので、転ばないように気をつけましょう。反りがちになる姿勢が腰痛の原因になったりするので、注意して過ごすようにしてください。お腹の張りを感じても痛くはなく、張りがすぐにおさまる場合は様子をみてもよいですが、あまり頻繁であったり張りが強い場合は産婦人科を受診しましょう。
赤ちゃんの特徴
皮下脂肪がついて丸みを帯びた体型になり、脳や肺、消化器以外の臓器が完成します。だんだんと母親の心拍や呼吸などの音、声がわかるようになるので、たくさん話しかけてあげましょう。この頃から頭が下の姿勢で落ち着く赤ちゃんが多いですが、よく向きを変える赤ちゃんもまだまだいます。
妊娠9ヶ月(32週〜35週)
赤ちゃんの肺機能がほとんど完成してくる時期ですが、まだ未熟な機能もあるので、もう少しお腹のなかで成長する必要があります。出産まで日々の胎動や妊婦健診で赤ちゃんの状態を確認してください。
母体の特徴
動悸や息切れが激しくなったり、仰向けの状態など同じ体勢で長時間過ごすことがつらく感じることがあります。大きくなった子宮が膀胱を圧迫し、頻尿や尿漏れなどのトラブルがみられる場合も。また、尿漏れだと思っていたら破水だったというケースがあります。破水は羊水が流れ出ることで、お産を迎える前に起こってしまうと子宮内感染の可能性があるので治療が必要です。尿漏れか破水か分からない場合は受診してください。
赤ちゃんの特徴
身体づくりが最終段階を迎えます。さらに皮下脂肪を増やし、出産時の赤ちゃんのエネルギーとして蓄えています。肺機能がほぼ完成してくるため、34週以降なら人工呼吸器を必要としない場合もありますが、なるべく37週まではお腹の中にいてもらうよう、無理せず過ごしましょう。このあたりから、身長や体重など赤ちゃんの発育の個人差が大きくなります。
妊娠10ヶ月(36週〜)
臨月といわれる時期で、赤ちゃんに会えるまでもうすぐ。出産や育児に対して不安もあるかもしれませんが、妊婦健診などの際に医師や助産師に尋ねて正しい知識を得て、安心して過ごしてください。
母体の特徴
出産が近づくと、赤ちゃんが子宮口に向かって下がってくるので、動悸や胃もたれがおさまってくることが多いですが、膀胱が刺激されるため頻尿や尿漏れのトラブルは続くかもしれません。また、不規則なお腹の張りや痛みを感じる前駆陣痛が起こることもあります。陣痛の強さや頻度がどの程度で病院へ連絡するかは病院までの距離などによっても異なるので、かかりつけの産婦人科で確認しておきましょう。
赤ちゃんの特徴
この時期にはすべての臓器が完成し、赤ちゃんはいつお腹の外に出ても大丈夫な状態です。ただ妊娠37週以降が正期産で、36週までは早産という扱いになります(赤ちゃんが元気であれば早産でも問題はありません)。36週で産まれてもなにも処置が必要ないほど元気なこともあれば、逆に37週で産まれても最初は呼吸が安定しないこともあります。この時期は赤ちゃんの身体も大きくなり胎動はさらに力強くなります。胎動は出産まで続きます。
妊娠後期によくある症状
出産が近づくにつれ、母体も赤ちゃんの成長に合わせて変化し、それに伴いさまざまな症状が現れます。今回は、妊娠後期によくみられる症状をご紹介します。不安を感じることもあるかもしれませんが、多くの場合は妊娠週数が進むことによる自然な変化から生じるものです。正しく理解して適切にケアしながら、リラックスして過ごせるようにしましょう。
吐き気
つわりは後期になると軽減することが一般的です。しかし、子宮が大きくなり胃が持ち上げられることで、胃液が食道に流れてしまい、気持ち悪くなったり吐き気を感じたりすることがあります。消化器官の働きが低下して食べ物の消化に時間がかかるようになり、これも吐き気につながります。
お腹の張り
赤ちゃんの胎動で張りを感じることがありますが、張ってもすぐおさまり、1日に数回程度のものであれば心配はいりません。痛みや出血を伴う場合は、早めに医師に相談してください。
尿漏れ・頻尿
子宮が大きくなり膀胱が圧迫されるため、尿漏れや頻尿の症状が現れやすくなります。とくに、咳をする、くしゃみをする、急に立ち上がるなど、お腹に力が入ると尿漏れが起こりやすいです。尿漏れを気にして水分を控えてしまうと膀胱炎などにもつながります。適度な水分摂取と尿意を感じたらトイレに行くことを意識してみてください。
腰痛
腰痛を感じることが多くなります。大きくなるお腹を体が支えるために腰に負担がかかるからです。また、骨盤の関節が緩むことも原因の一つです。正しい姿勢を保つよう心がけ、腰をサポートするために骨盤ベルトを活用したり、寝るときや座っているときは、枕やクッションを使ってみてください。また、適度な運動やストレッチも腰痛を和らげるのに効果的です。
むくみ
足や足首、手や指がむくみやすくなります。とくに妊娠後期は循環血液量が増えて体内の水分量が増えるためです。むくみを軽減するためには、足を上げて休むこと、適度な運動、塩分摂取を控えることなどが効果的です。ただし、急激なむくみや顔の腫れなどの異常がみられる場合は医師に相談しましょう。
妊娠後期に注意すること
お腹の赤ちゃんの健康的な成長と母親の健康を守るために、特別な注意が必要な期間です。お腹が大きくなり身体への負担が増えるため、日常生活の中で姿勢や行動に気を配ることが重要です。これからご紹介するポイントを意識してみてください。
寝る時の姿勢
全身からの血液が戻ってくる大きい血管(下大静脈)が、子宮の後ろの右側に位置しているため、子宮に圧迫されて、母親が気持ち悪さや息苦しさを感じることがあります。ですので、左側を向いて寝る方が楽なことが多いです。ただ、気分が悪くなければどの向きで寝ても大丈夫ですので、楽と感じる姿勢でかまいません。また、枕や布団を使ってお腹や腰をサポートすることで、快適に眠りやすくなります。
お腹に負担のかかる行動
とくに体調に問題がなければ、いつも通りの日常生活を送り、出産の体力づくりのためにも散歩やヨガなどの無理のない範囲での運動をおすすめします。しかし、長時間立ち続けたり座り続けたりするようなお腹に負担がかかる作業や、高いところ・不安定な足場など転倒のリスクが高い場所での作業は避けましょう。
身体を温める
身体が冷えると筋肉が緊張して肩こりがひどくなったり、お腹が張りやすくなることも。身体を温めることで体も心もほぐれてリラックスできます。食べ物や飲み物で身体の内側からあたためたり、カーディガンやひざ掛けを使ったり、ゆっくりお風呂につかってみましょう(のぼせないよう注意してください)。
妊娠後期にすべきこと
妊娠後期に入るといくつか準備すべきことがあります。準備をしっかりしておくと、出産とその後の生活に安心感を持てます。とはいえ、準備を進めていくうちに不安も出てくるかもしれません。できることから準備に取り組み、少しずつ不安を取り除いていきましょう。
緊急事態対応の確認
妊娠中は、調子のよい日が続いていても、いつ何が起こるかわからないものです。とくに妊娠後期では、陣痛や破水が思ったより早く起こることもあるため、入院の準備をしておくと安心です。病院の連絡先や緊急連絡先などを書いたメモ、母子手帳、健康保険証、診察券、突然の破水や出血に備えたナプキンなどを持ち歩くようにしましょう。また、上のお子さんがいる場合などは、陣痛破水時のご家族のサポート体制もシミュレーションしておきましょう。
入院準備
出産に備えて、妊娠9ヶ月頃までに入院準備をしておきましょう。入院バッグには、自身と赤ちゃんの必需品を用意しておきます。母子手帳や身分証明書、診察券、健康保険証、そのほか必要なものは病院によって異なるので確認しておきましょう。横になっていても水分がとりやすいストローつきのペットボトル用キャップなどがあると出産の水分補給の際に便利です。
出産後の申請に必要な書類の確認
出産後に必要な手続きや申請についても確認しておきましょう。出生届や児童手当、育児休業などの申請書類や手続きについて、役所や職場に確認しておきましょう。期日が決まっているものもあるため、早めに手続きを進められるようにしておきましょう。
ベビーグッズの準備
退院後の生活に必要なベビーグッズを用意しておきましょう。おむつ、おしりふき、衣類や沐浴に必要なグッズなどがあればまずは大丈夫です。ミルクや哺乳瓶は必要に応じて、ベビーベッドなどは各家庭の状況によって必要かどうか異なります。抱っこ紐やベビーカー、車で退院される方はチャイルドシートなど、赤ちゃんの移動手段も準備しておきましょう。予算や収納スペースに合わせて必要なアイテムを選び、早めに揃えることで安心して出産と育児を迎えることができます。
妊娠後期に
関する
よくある質問
Q.
食欲が増してしまい、
体重管理が難しいです。
どうすればよいですか?
A.脂っこいものを避けて野菜をたくさんとる、炭水化物を控えめにしてタンパク質を多めにとるなど工夫してみましょう。また、軽い運動やウォーキングを取り入れれば代謝を促進し、体重の増加を抑えることができます。運動してよいかどうか、妊婦健診の時に医師に相談しましょう。
Q.
出産予定日を過ぎると
どうなりますか?
A.出産予定日を過ぎても母子ともに健康であれば、妊娠41週頃まで待機することもあります。もちろんケースバイケースなので、場合によっては、自然に陣痛がくるのを待たずに出産を促すこともあります。不安や疑問がある場合は、医師に相談しましょう。
妊娠後期の症状と
注意すること まとめ
妊娠後期は赤ちゃんの成長と出産に向けた準備の時期であり、母体にも大きな変化があります。吐き気や腰痛、むくみなどの症状が起こることもあり、これらの症状には適切なケアが必要です。大切な時期なので、寝るときの姿勢やお腹に負担のかかる行動に気を付け、身体を冷やさないようにするなど、母子の健康と安全を守るために注意が必要です。身体の変化や注意点を理解しておき、知識と情報を活用しましょう。医師や助産師への定期的な相談やサポートを受けることも大切です。安心して赤ちゃんの誕生を迎えられるようにしましょう。
監修 稲葉可奈子先生(産婦人科専門医)