「排卵日」とは?
妊娠しやすい
時期と確率
記事内容
子どもを欲しいと思ったときに、妊娠についての知識を身に付けたり、自身の身体を把握したり、パートナーとの話し合いをしたりする妊娠に向けた活動を「妊活」といいます。その妊活を進めるにあたり、今回は、妊娠しやすい時期と関係が深い「排卵日」について、その意味や確率について詳しく説明していきます。
この記事は次のような人におすすめ
- 自分の妊娠しやすい時期を知りたい人
- 妊活を始めたいけど、何をしたらいいのか
わからない人 - パートナーとの妊活への取り組みを知りたい人
妊娠したいと思ったら
ここでは、妊娠したいと思ったときにやるべきことをご紹介します。妊娠はパートナーと共同の目標なので、お互いにコミュニケーションを図り、それぞれの考えや気持ちをしっかりと共有して協力し合いましょう。
健康的な生活が目標
栄養バランスの取れた食事や定期的な運動、十分な睡眠、ストレスの軽減などの健康的な生活を目指しましょう。禁煙やお酒を控えめにすることも大切です。また、過度なダイエットもやめてください。ホルモン分泌に影響して生理不順や排卵障害を引き起こしたりする原因となる可能性があります。健康的な身体は妊娠するのに理想的な状態を作り出します。一度、生活習慣を見直してみてください。
基礎体温の記録
基礎体温を記録する習慣をつけましょう。基礎体温とは寝ているあいだの体温のことで、目覚めてベッドから起き上がる前に婦人体温計で測ります。毎朝同じ時間帯に測るようにしてください。基礎体温の変動を記録することで、排卵日や生理周期など自身の身体の状態やリズムを把握することができます。ただ、きれいなグラフにならないという場合は、産婦人科を受診ください。また、毎日体温を測るのが難しい場合は、生理管理アプリで代用するのも1つの手です。
子宮頸がん・乳がん検診
この2つの検診を受けておくことはとても重要です。子宮頸がんにかかると妊娠に影響する可能性があります。異常があった場合に、早期発見して治療ができるように、2年に1度子宮頸がん検診を受けるようにしましょう。1997年度以降に生まれた方は、子宮頸がんなどを予防できるHPVワクチンを2025年3月まで無料で接種できるので、接種歴をご確認ください。また、妊娠中でも乳がんのリスクは存在しますが、とくに妊娠すると乳腺が発達してわかりづらくなってしまいます。妊娠する前に乳がん検診も受けておきましょう。
風疹の予防接種
20~40代の女性の約20~30%は妊婦健診で抗体値が低いと指摘されています。(2023年時点の情報)妊娠してから、とくに妊娠初期に風疹にかかってしまうと、赤ちゃんに白内障や心疾患、難聴などの症状が出る先天性風疹症候群を発症する可能性があります。また、男性側にも同じだけのリスクがあります。まずはお互いに抗体があるかチェックして、抗体値が低い場合は妊娠する前に予防接種を受けるようにしましょう。自治体から補助がでることもありますので、調べてみてください。
感染症や病気
風疹以外にも、気をつけたい感染症や病気があります。妊娠中は母体が重症化したり、流産や早産のリスクが高まったり、赤ちゃんに影響が出たりする可能性があるからです。麻疹や水痘(水ぼうそう)、ムンプス(おたふく)、破傷風、ジフテリア、百日咳、インフルエンザや新型コロナウイルスは風疹と同様にワクチン接種で予防することができる感染症です。麻疹や風疹、ムンプス、水痘などの生ワクチンは妊娠中に接種することができないので、妊娠前に受けておきましょう。また、性感染症の検査も受けておくことをおすすめします。たとえば、クラミジアは不妊や子宮外妊娠の原因となる可能性があり、梅毒は胎盤を通して赤ちゃんにうつり先天性梅毒になる可能性があります。妊娠前に一通り性感染症の検査を受けておくと安心です。
その他の注意点
薬の服用やレントゲン撮影にも注意が必要です。妊娠に気が付かず薬を飲んでしまった、というケースはめずらしくありません。不安があれば医師に相談してください。持病などがあり、病院で処方された薬を飲んでいる場合は、妊活開始前に医師に妊娠を希望していることを伝えましょう。治療の続行や薬の服用について相談して、最適な治療法を検討してください。また、生理が遅れているなど妊娠の可能性がある場合はレントゲン撮影を控えてください。
妊娠についての基礎知識
「妊活を考え始めたけど、何をしたらいいかわからない」という方もいると思いますが、実は妊娠のしくみについて正しい知識を持つことは非常に重要です。排卵、射精、受精、そして着床という過程が組み合わさって妊娠が成立する、このしくみを理解しておくことが、問題解決のヒントや正しい心構えにつながります。
1. 排卵
排卵とは、女性の生理周期のうち1周期に1回、卵巣から成熟した卵子が出てくることです。一般的には生理の14日前に起こります。卵子の寿命はおよそ24時間で、それまでに受精しないと自然に体に吸収されてしまいます。女性は約200万個の卵子を持って生まれますが、卵子が新しく作られることはなく、毎回の排卵を通して徐々にその数が減っていきます。
2. 射精
射精とは、男性が精子を含む精液を体外に出すことです。性交渉により射精すると、精子は腟内に入り子宮頸部を通って卵管へ進み、排出される卵子を待ちます。通常、1回の射精で1億以上の精子が出ますが、卵管までたどりつくのはほんのわずか。卵子と結びつくのは1個だけです。
3. 受精
受精とは、卵子と精子が出会って融合することです。射精によって排出された精子は、卵管で卵子と出会います。そこで1番最初に卵子に到達した精子が卵子と受精でき、それによって卵子は受精卵となり、卵管を通って子宮へ移動します。
4. 着床
着床とは、受精卵が子宮内膜にくっついて内膜のなかに侵入するまでの過程のことです。着床すると妊娠が成立します。着床は受精後5〜7日で始まり、12日程度で完了します。順調であれば、着床が始まってから10日前後で妊娠の反応が出ます。
妊娠しやすい時期
妊娠しやすい時期とされているのは排卵日2日前~排卵日翌日です。排卵のタイミングは人によって異なるので、自身の生理や排卵の周期を把握しておくことが重要になります。排卵日を把握するためには、①基礎体温の変化を見る ②おりものの量や質の変化を見る ③市販の排卵日予測検査薬を使う ④生理管理アプリから推測する、などの方法があります。また産婦人科で、超音波検査を行い卵胞のサイズを測ることで排卵の時期を推測する「卵胞チェック」という方法もあります。
1. 基礎体温で把握する
基礎体温は女性ホルモンの影響を受けるため、生理周期が規則的で、毎日の基礎体温を正しく基礎体温表に記録していれば、排卵を境に低温期から高温期に変化したことがわかります。これを3周期続けるとおおよそのパターンがわかり、排卵のタイミングを予測できます。
基礎体温例
ただし、基礎体温は毎朝目覚めた後、身体を動かさずに寝たまま婦人体温計を用いて舌下で測るなど、正確に計測することがむずかしい上に、正確に測れたとしても排卵日を特定できるのは排卵が起こったあとになってしまいます。毎日測定することが大変な場合は、基礎体温にこだわりすぎなくて大丈夫です。
2.
おりもの(子宮頸管粘液)
で把握する
おりものの量や質の変化からも、排卵日を予測できます。おりものは、精子が卵子に出会うまでの道をスムーズにするためのものです。排卵日直前は粘り気が強く透明度が増し、おりものの量が増えます。当日〜排卵後は、少し粘り気が感じられる卵白のような状態になり、量も減ります。生理直後は粘り気はほとんどなく、サラっとした状態です。ただし、おりものは体調によって変化することもあります。
3.
排卵日予測検査薬で
把握する
排卵日予測検査薬とは、尿中に分泌される「LH(黄体形成ホルモン)」を検出することによって、排卵日を前もって予測するものです。一般的には排卵日2日前~翌日が妊娠しやすい期間で、排卵日予測検査薬を使うと排卵日を1日前に把握することができます。
LHは生理周期中に分泌されて排卵を引き起こすもので、排卵日前に分泌量が急増します。排卵日予測検査薬は尿中のLH濃度上昇を検出し、排卵日を約1日前に自分で簡単にチェックできます。 第1類医薬品の取り扱いのあるドラッグストア、薬局などで購入できます。
排卵日予測検査薬
妊娠の確率
女性の妊娠力と年齢には密接な関係があります。年齢とともに妊娠の可能性は低下していきます。女性の妊娠力は20代のうちにピークを迎え、それから徐々に下がっていき、35歳あたりで急激に下がります。ですので、先延ばしにしないですむ妊活は先延ばしにしないようにしましょう。女性の年齢の影響はどうしてもあるため、年齢も考慮しつつ、二人に合った計画を立ててみましょう。
ART:生殖補助医療(不妊治療の総称)
妊娠率/総ET:すべての胚移植のうち、妊娠に至った割合
妊娠率/総治療:すべての生殖補助医療のうち、妊娠に至った割合
生産率/総治療:すべての生殖補助医療のうち、子どもが生きて産まれた割合
流産率/総妊娠:すべての妊娠のうち、流産に至った割合
年齢によって
妊娠の確率が変化する理由
年齢とともに妊娠しづらくなってしまう理由に、年齢による卵子の変化があります。卵子のもとになる「卵母細胞」は胎児の頃につくられ、出生時に約200万個、初潮を迎える思春期の頃には約30万個になり、それから毎月約1000個ずつ減っていきます。また、卵子の数だけでなく質も低下します。年齢が若いほど、卵巣機能や卵細胞が元気なので妊娠しやすい状態です。元気な卵子は、卵子にダメージがあったりDNAに異常があったりしても自分で治すことができ、受精した精子にダメージがあった場合も、卵子のDNA修復機能で治すことができます。こうした機能が年齢が上がるとともに低下するため、ダメージを修復できずに着床できないことや、着床しても流産してしまう可能性が高くなります。
男性も年齢によって
妊娠の確率が変わる
実は、精子も年齢とともに量や質が低下していきます。まだわかっていないことが多いですが、男性は年齢とともにDNAが損傷した精子の割合が増えていき、自然妊娠や人工授精での妊娠の確率が下がるといわれています。また、精子のDNA損傷は生まれてくる赤ちゃんにも影響があると考えられています。つまり、妊娠の確率には女性だけでなく男性も関係しているということです。しっかり理解しておきましょう。
妊娠の確率を上げる方法
妊娠にはさまざまな要素が関わっていますが、ライフスタイルの改善によって確率を高めることは可能です。ここでは、妊娠の確率を上げるための具体的な方法やアドバイスを紹介します。
1. 排卵日を把握しタイミングをはかる
排卵日を正確に予測することは、妊娠の確率を上げるために重要なポイントのひとつです。基礎体温の測定や排卵日予測検査薬などで排卵日を把握し、性交渉のタイミングをはかりましょう。妊娠のしくみとして、卵管で精子が卵子の排卵を待っているという状態が望ましいので、排卵日の数日前からなるべく毎日性交渉をすることが理想的だといえます。
2. 規則正しい生活
健康的な生活習慣は、妊娠に向けて体調を整えたり、ストレスを軽減したりすることにつながります。まずは規則正しい生活リズムを心がけ、睡眠や食事などの時間をなるべく一定にしましょう。妊活において、お互いに自身の体調を把握し、規則正しい生活リズムを維持することは妊娠への第一歩です。
3. 適度な運動
適度に運動することで、体重をコントロールしたりストレスを軽減したりすることができます。運動はホルモンバランスを整え、血液循環を促進する効果があるので、卵巣機能や精子の質の改善が期待できます。激しい運動や過度な運動ではなくウォーキングやヨガといった軽い有酸素運動で大丈夫です。
4. 食生活の見直し
食生活では、女性も男性も栄養バランスのよい食事を心がけましょう。タンパク質の不足は細胞の栄養不足につながるため、卵子や精子の成長を妨げます。そして、女性は葉酸やビタミンD、男性は亜鉛も重要です。卵子や精子の働きを高め、受精の可能性も高まるのでこれらの栄養の摂取を意識していきましょう。サプリを活用してもよいです。もちろん、とりすぎには注意してください。
5. 温活
身体を温めることで血流がよくなり、リラックスすることで、ストレスを軽減できる効果が期待できます。温泉やお灸といったものから、靴下やひざ掛けで下半身を温めるなどの簡単にできるものまで、さまざまな方法があります。身体に負担を感じる過度な温活は逆効果になることもあるので、無理のない範囲でチャレンジしてみましょう。
6. ストレスを溜めない
強いストレスは不妊の原因となります。ストレスによりホルモンバランスが崩れ、女性は卵巣の機能が低下して排卵が止まったり、男性は勃起障害になることがあります。妊活へのストレスにも注意が必要で、「体外受精をくり返しても妊娠できなかったカップルが治療をやめたら自然妊娠した」というようなケースもあるので、無理はせずに二人のペースで進めるようにしましょう。
7. 医療機関を受診する
妊活を始めてもなかなか妊娠できず1年以上経つ場合、専門の医療機関の受診をおすすめします。不妊治療を専門とするクリニックでは、正確な判断や治療を受けることができます。また、妊活は精神的な負担も大きくなるので、専門のカウンセリングや心理的サポートを受けることも大切です。早めの受診が、妊娠の可能性を高めることにつながります。女性の年齢や、早めに妊娠したいなど、状況によっては1年にこだわらず早めに受診しても大丈夫です。
妊娠しやすい
時期に関する
よくある質問
Q. 妊娠確率を上げる性交渉の頻度はどれくらいですか。
A.妊娠のしやすさは性交渉の頻度と関係があります。たとえば2〜3日に1回の頻度であれば、精子が常に女性の体内にあり、排卵がいつ起こっても妊娠しやすい状態になります。無理に排卵日に合わせるのではなく、普段から頻度を増やすのも一手です。
妊娠しやすい時期 まとめ
妊娠しやすい時期とは、女性の生理周期や体調、年齢にも左右されますが、一般的には排卵日2日前~排卵日翌日です。この時期は性交渉による受精の確率が高まるため、子どもを望む場合には重要なタイミングとなります。排卵日を正確に把握して、そのタイミングを逃さないようにチャンスを増やしていきましょう。とはいえ、妊娠しやすい時期だからといって無理はしないでください。ストレスにもつながってしまいます。規則正しい生活リズムの維持や医療機関の受診も、妊娠しやすい時期を迎える大切なポイントなので、できることから始めていきましょう。
監修 稲葉可奈子先生(産婦人科専門医)