妊娠初期に
気をつけたいこと
記事内容
妊娠初期とは、妊娠4ヶ月までの期間のことで、赤ちゃんの成長にとってとくに重要な時期だといえます。妊娠が初めての人も、そうでない人も、不安や疑問はたくさん芽生えると思います。ここでは、妊娠初期において気をつけるポイントについて詳しく説明していきます。これらのポイントをおさえて、なるべく心穏やかに過ごせる時間を増やしましょう。重要な時期ではありますが、無理せず、自分のペースで過ごすことが大切です。
この記事は次のような人におすすめ
- 妊娠がわかり、生活や心身に不安がある人
- 妊娠初期の食事のポイントを知りたい人
- パートナーの妊娠がわかり、
サポート方法を知りたい人
妊娠初期の期間と症状について
妊娠初期の症状は、次の生理予定日を過ぎた頃(妊娠4~5週頃)に現れることが多いです。この時期は身体が妊娠に適応するためのさまざまな変化が起きます。症状の例としては、胸の張りや痛み、吐き気や嘔吐、疲労感、食欲の変化などです。これらは、すべての方が同じように経験するわけではなく、症状の有無、程度や期間も人によって異なります。現れる症状について過度に心配する必要はありませんが、不安や疑問、辛い症状がある場合はすぐに医師に相談するようにしましょう。また、喜びと同時に不安も抱える時期かと思いますが、自分の身体の変化を受け入れながら、気持ちにゆとりを持って過ごすようにしてください。
【チェックリスト】
妊娠初期に気をつけたいこと
妊娠初期に気を
つけるべき「食べ物」
妊娠初期はつわりで食べられるものが限られることも。気をつけた方がよい食材だけ確認をして、それ以外は細かいことは気にせず食べられるものを食べましょう。量が十分に食べられなくても赤ちゃんはまだ小さいのでちゃんと育ちます。
妊娠初期に避けるべき・
気をつけるべき食べ物
生肉は細菌や寄生虫が存在している可能性があり、トキソプラズマ症などのリスクがあります。レアや生ハムを含め、避けることを推奨します。
下記表内の食べ物については、摂取や食べ過ぎに注意をしてください。
摂取に気をつけるべき食べ物
生魚 | 食中毒や寄生虫のリスクがあります。 |
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生卵 | サルモネラ菌が含まれている可能性があり、食中毒のリスクがあります。 |
ナチュラルチーズ | リステリア菌が含まれている可能性があり、食中毒のリスクがあります。 |
食べ過ぎに注意が必要な食べ物・成分
高水銀の魚 |
まぐろや金目鯛などの食物連鎖上位の魚には自然界で発生する水銀が蓄積しています。 胎児は水銀を体外に排出することができないため、これらの魚を食べすぎると胎児に影響を及ぼす可能性があります。食べ過ぎには注意しましょう。 |
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揚げ物 | 食べ過ぎると、妊娠糖尿病のリスクが上がります。 |
ビタミンA (適正量は必要) |
過剰摂取は胎児奇形を起こす可能性が高くなります。 レバーやうなぎに多く含まれるため、食べ過ぎには注意しましょう。 |
ヒ素 |
健康被害を及ぼす成分で、ひじきに多く含まれます。 胎児はヒ素を体外に排出することができないため、食べ過ぎには注意しましょう。 |
妊娠初期にとるべき
食べ物・成分
緑黄色野菜 | 葉酸や鉄分が豊富に含まれています。 |
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キノコ | ビタミンDが豊富に含まれています。 |
豆類 | たんぱく質や食物繊維が含まれています。 |
柑橘類 | ビタミンCが多く含まれています。 |
ナッツや種実類 | 良質な脂質やたんぱく質、食物繊維が含まれています。 |
カルシウム | 胎児の骨や歯の発育に重要な栄養素です。 |
鉄分 | 妊娠中は血液量が増えるため、鉄分の摂取が重要です。 |
食物繊維 | 妊娠中になりがちな便秘を予防します。 |
妊娠初期におすすめの
簡単メニュー
妊娠初期におすすめのメニューを3つご紹介します。
身体にやさしい食材を使い、栄養バランスにも配慮した料理です。
1. 野菜たっぷりミネストローネ
ミネストローネはたくさんの野菜が入った栄養満点のスープです。人参、じゃがいも、トマトなどの野菜を切って煮込み、最後に豆やパスタを加えてもよいですね。やさしい味わいで消化にもよいので、妊娠中のお昼ごはんにぴったりです。
2. グリーンスムージー
グリーンスムージーは、青汁や野菜ジュースをベースに、好きなフルーツやヨーグルトを加えてつくる健康的なドリンクです。妊娠中の栄養補給にぴったりで、ビタミンやミネラルを豊富に摂取することができます。さっぱりとした飲み口で、朝ごはんやおやつにおすすめです。
3. 鮭ときのこのホイル焼き
鮭にはDHAやタンパク質、きのこには食物繊維などの栄養素が豊富に含まれ、赤ちゃんの脳や神経の発育によいとされています。きのこと一緒にホイルで包んで焼くだけで簡単に作れます。栄養満点のメイン料理としてお楽しみください。
妊娠初期に気を
つけるべき「飲み物」
妊娠中は多くの水分摂取が必要とされていますが、注意すべき飲み物もあります。
ここでは、母体や胎児への影響が心配される飲み物についてご紹介します。
1. カフェイン
過度のカフェイン摂取は流産や胎児の成長を阻害するリスクがあります。利尿作用による脱水症状や、神経刺激物質であるために睡眠障害になる可能性もあります。WHO(世界保健機関)は1日のコーヒー摂取量を3〜4杯までにすることを推奨しています。摂取量を減らすために、麦茶やデカフェの飲み物に切り替えることをおすすめします。
2. アルコール
胎盤を通じてアルコールが胎児の血液に入ってしまい、胎児の発育や神経系に悪影響を及ぼすリスクがあります。胎児アルコール症候群という深刻な状態を引き起こす危険もあるので、妊娠中の飲酒は避けましょう。
妊娠初期に
気をつけるべき「喫煙」
たばこに含まれる有害物質やニコチンは胎盤を通じて胎児に届き、発育や成長に悪影響を与え、早産や子宮内発育不全、低体重出生のリスクを高めます。喫煙は母体にも悪影響を及ぼし、心血管系の疾患や呼吸器疾患にかかる可能性が上がるだけではなく、妊娠高血圧症候群といった病気の発症リスクが高まります。また、副流煙についても同様の影響があるので、パートナーも喫煙は控えるべきです。喫煙後に肺内に溜まった有害物質は30〜45分のあいだ口から排出されます。目の前で吸っていなかったとしても、喫煙後すぐに同じ空間にいることで、有害物質が母体に入ってしまうのです。また、産後のことを考えても、パートナーも禁煙しましょう。禁煙が難しく感じたら、医師や専門家のサポートを受けることも考えてみてください。赤ちゃんと妊婦の健康を守るために、妊活とともに禁煙しましょう。
妊娠初期に
気をつけるべき「感染症」
妊娠中の感染症は、ものによっては、自身の症状は軽くても赤ちゃんや妊娠経過に影響することがあります。母親を通じて赤ちゃんが感染することを母子感染といいます。どのような感染症に気をつけるべきかを知っておき、適切な予防や対策をしておきましょう。また、予防は妊婦だけでなく家族全員が心がけましょう。
風疹 | 妊婦が風疹に感染すると、胎児に重篤な障害を引き起こす可能性があります。風疹のワクチン接種を確認し、感染しないよう努めましょう。 |
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B型肝炎や C型肝炎 |
感染経路が血液や体液であり、母子感染のリスクがあります。 妊娠前にワクチン接種を受けることが推奨されています。 |
急性ウイルス性 呼吸器感染症 (例: インフル エンザ) |
妊娠中の免疫力は低下しているため、ウイルス性呼吸器感染症にかかりやすくなります。予防接種や手洗い、人ごみを避けるなど、感染予防策を取りましょう。 |
クラミジア | クラミジアは性感染症の一種で、自覚症状がない場合が多く注意が必要です。妊娠初期に感染すると流産のリスクが高まります。妊娠中でも治療が可能で、産道感染を防ぐことができます。 |
ムンプス (おたふく風邪) |
妊娠中におたふく風邪に感染すると重症化しやすく、流産のリスクも高まります。抗体をもっていない場合は、あらかじめワクチンを接種しておきましょう。 |
トキソプラズマ | トキソプラズマという寄生虫が体内に入ると感染し、胎児の先天異常や流産、早産の原因になります。加熱不十分な肉や猫の排泄物に寄生している可能性があるので気をつけてください。 |
梅毒 | 梅毒は細菌性の性感染症で、妊娠中に感染すると流産や死産のリスクがあるほか、胎児にも骨や神経の異常などの先天性梅毒の症状をもたらすことがあります。妊娠初期に必ず検査をします。 |
新型コロナ ウイルス |
妊娠中に感染すると、重症化リスクが高い傾向にあります。 また中期以降に感染すると早産(37週未満)の可能性が高まり、新生児もNICU(新生児集中治療室)への入室を必要とする事例が多い傾向にあります。妊娠中もワクチンを接種することができます。 |
特にリスクが高く、罹患者数も多い感染症を書き出しています。
妊娠初期に
気をつけるべき「薬の服用」
妊娠初期は赤ちゃんの各器官が形成される時期であり、薬の種類によっては極めて稀ですが赤ちゃんに影響がでることがあります。逆に、妊娠中はどんな薬も飲んではいけないわけではなく、妊娠中も飲める薬はあります。このような理由から、妊娠中の薬の服用は自己判断せず、必ず医師に相談してください。もともと持病で常用薬がある場合は、主治医に妊娠しても問題ないか妊活開始前に確認しましょう。妊娠中は市販薬の使用についても医師や薬剤師に相談しておきましょう。不必要な薬の服用は避けるべきですが、必要な薬は添付文書を読んで、用法・用量をきちんと守り、適切に服用することが大切です。
妊娠初期に
気をつけるべき「運動」
妊娠中の適度な運動には、ストレス解消や便秘予防、体力づくり、体重コントロールなどのさまざまなメリットがあります。妊娠初期はつわりがあって難しい方もいますので、無理のない範囲で取り組み、安静に過ごすことを優先してください。つわりの症状が落ち着いてから積極的に運動をしていけば問題ありません。
身体に必要以上の負担をかけないよう、季節の変化も考えながら運動の内容を決めていきましょう。ここでは、季節ごとにおすすめの運動と注意点をご紹介します。
春
春は穏やかな気候の季節です。ウォーキングや軽いストレッチなど低負荷の有酸素運動がおすすめです。新緑の中で自然に触れつつ散歩をしてリフレッシュしましょう。疲労感がある場合は適度に休息をとることを忘れないでくださいね。お腹が張る場合は無理せず休みましょう。休んでも張りがおさまらない場合は産婦人科を受診しましょう。
夏
夏は暑さに注意が必要です。屋内での水泳や水中運動は涼しく快適な運動方法です。屋外でも、朝や夕方の涼しい時間帯の散歩なら気持ちよく過ごせるかもしれませんが、こまめに水分補給を行い、くれぐれも熱中症には気をつけて。無理に外で運動する必要はありません。
秋
秋は過ごしやすい季節です。ウォーキングなどのアウトドア活動がおすすめです。心地よい風を感じながら運動することでリフレッシュできます。身体を冷やさないように、天候の変化に備えて羽織るものを用意しておきましょう。
冬
冬は寒さにより冷えてお腹が張ることのないよう注意が必要です。室内でのストレッチやヨガ、妊婦向けエクササイズなど、屋内でできる低負荷の運動を選びましょう。天候や地域によっては路面が凍っていて滑りやすいこともあるので、外出時はくれぐれも転倒に気をつけましょう。
妊娠初期に
気をつけるべき「ストレス」
妊娠初期には、身体と心の健康を保つためのストレス管理が重要となります。妊娠中に感じるストレスの原因はさまざまで、ホルモンの変化や身体的な症状、妊娠や出産に対する不安や人間関係などもあります。不快な症状については産婦人科で相談をしましょう。不安については、なにが不安なのかを具体的に考えてみると解決することも多いです。一人で抱え込むことのないように、相談窓口の活用も考えてみてください。
十分な休息と睡眠もストレス軽減には大切です。ストレッチやヨガ、マタニティピラティスといった運動も効果的ですし、音楽を聴く、読書する、お風呂に入るなど、自分がリラックスできる方法を見つけ、その時間をつくることも大切です。また、パートナーや家族との会話や相談、コミュニティへの参加など、自分を理解してくれる人を見つけて心の安定を図ることも重要です。妊娠初期にストレスを軽減することは、母体の健康と胎児の発育にいい影響を与えます。自身の身体と心の声に耳を傾け、適切なストレス管理を心がけましょう。
妊娠初期に
気をつけるべき「体勢」
妊娠初期はまだそこまでお腹が大きくないので、普段通りで大丈夫です。姿勢に気をつけるようにすることで、お腹が大きくなっていく際に身体への負担を軽減することができます。座るときはなるべく背もたれのある椅子を選び、転ばないように気をつけましょう。妊娠中は立ちくらみが起きやすいので、立ち上がるときは、急がずゆっくりと動きましょう。また、長時間の立ち仕事や同じ姿勢のままでいることは避け、こまめに休憩を取り、身体を動かすことも大切です。
妊娠初期に気をつけるべき
「車や自転車の運転」
運転中には突然のアクシデントや衝撃が起こる可能性があり、また、妊娠中は普段よりも疲れやすいこともあります。車や自転車の運転が生活に必要な方も多いと思いますが、自身の体調を考慮して、普段との違いを認識した上で、工夫をしながら十分に注意してください。
車の運転
適切な速度で走行し、急ブレーキや急なハンドル操作を避けましょう。妊娠中を通して、お腹が大きくなってもシートベルトは欠かすことなく正しい位置で装着することが大切です。お腹の下ではなく、骨盤の上に装着することで赤ちゃんに負担をかけることなく、安全性を確保できます。
自転車の運転
お腹が大きくなるとバランスがとりづらくなるため、慎重に運転するようにしましょう。サドルを低めにして停車するときにバランスをとりやすくしたり、パンツスタイルなどの自転車の運転に適した服装を意識したりすることも大切です。段差のある道などは、転倒のリスクが高いので十分に気をつけましょう。
妊娠初期に
気をつけるべき「虫歯治療」
虫歯の治療には注意が必要です。治療を受ける際には、まず歯科医に妊娠初期であることを伝えましょう。妊娠中は特別な配慮が必要な場合がありますので、医師との相談が重要です。一般的には妊娠初期の治療は安全とされていますが、放射線や薬物の使用には注意が必要です。また、歯磨きや口腔ケアも徹底しましょう。虫歯の原因となりやすい食べ物や飲料を控え、歯磨きは正しい方法で丁寧に行います。口腔衛生の維持は虫歯予防につながりますので、日常的なケアを心がけましょう。妊娠期間中は定期的な歯科検診も大切です。
妊娠初期に
気をつけるべき「体調の変化」
妊娠初期にはさまざまな症状がありますが、放っておいてはいけない症状もあります。たとえば出血、日常生活に支障が出るほどの強い頭痛やお腹の痛みがあるときなど、体調に異変があればすぐに受診してください。ただし、妊娠初期の流産は母体の過ごし方とは無関係に約15%の確率で起こります。妊娠初期の流産の原因は胎児側にあり、なかでも多いのは受精卵の染色体異常です。胎児の成長がとまっても出血や腹痛などの自覚症状がなく、診察して初めて確認される稽留(けいりゅう)流産というものもあります。胎児側に原因がある初期流産は何をしても防ぐことはできませんし、どれだけ意識していても気づけない場合があります。「受診するのが遅かったのかも」「仕事を休んでゆっくりしていたら」と後悔される方もいらっしゃいますが、妊婦さんのせいでは全くありませんし、防ぐことができるものではありませんので、自分を責めないようにしてください。
妊娠初期にパートナーが
気をつけるべきこと
母子の健康にとって重要な時期である妊娠初期。
妊娠初期はパートナー同士の絆を深める大切な時期でもあります。パートナーの理解とサポートで、母子の健康を守りましょう。
パートナーが気をつけるべきこととして次の例が挙げられます。
妊婦の体調への理解
妊娠に伴う身体の変化やホルモンの影響で、吐き気や疲労感をおぼえることがあります。妊娠初期はデリケートな時期なので、心のケアも大切です。感情の変化に寄り添ってサポートしてください。
食事に気を配る
栄養バランスが大事と思いがちですが、初期はつわりで思うように食べられないこともあります。そういう時は食べたいものを食べられるだけ食べてもらえればかまいません。ただし、生肉は食べさせないでください(生ハムも避けてください)。
生活環境に気を配る
妊娠初期は胎児の発育が始まる時期ですので、安心して過ごせるように環境を整えることが重要です。喫煙は妊活中からやめるようにしましょう。車の運転のサポートや重たい荷物を持ってあげたり、家事に積極的に取り組むことも助けとなります。
妊娠初期に
関する
よくある質問
Q.
つわりがひどいです。
いつまで続きますか?
A.個人差がありますが、妊娠12週頃で落ち着いてくる方が多いです。空腹にならないように食事の間隔を短くしたり(分食)、湯気にあたらないよう冷やしてから食べたりなど、いろいろ試してみながら自分が楽になる方法を探してみましょう。
Q.
妊娠初期に運動は
しても大丈夫ですか?
A.妊娠初期に運動はできますが、無理はしないでください。ウォーキングなど、低負荷な運動がおすすめです。体調や妊娠の経過によって制限がある場合もあるので、医師に相談してみましょう。
Q.
妊娠初期にサプリメントは
必要ですか?
A.葉酸を摂取しましょう。鉄分を含むものも摂っておくと貧血の予防につながります。その他は医師と相談の上、必要に応じて使うようにしてください。
妊娠初期に気をつけたいこと まとめ
妊娠初期は母子の健康にとって重要な時期です。バランスのとれた食事、生活習慣、ストレス管理など、この期間はさまざまな注意点に気を配ることが求められます。大切な赤ちゃんのためにも、自身の健康をしっかりと守るようにしてください。何か問題があれば早めに対応し、十分な休息を心がけましょう。また、妊娠期間はパートナーと共に歩む特別な期間です。お互いに協力し合って、健やかな妊娠生活を過ごしましょう。
監修 稲葉可奈子先生(産婦人科専門医)